Dear Prince





2




伝説の生物にさらわれた後、聞かされた話は。
内容を認識した後も耳を疑うほどのものだった。


僕のいた国。
彼の生まれた、彼の国。


彼が侵略を企てる…なんて…。


「それは、事実なのですか?」

「何よ、あたしの言うことを疑うっていうの?
 間違いない事実よ。」


「そんな…。」


最後に会った日を思い出す。

彼との別れを告げるのが辛くて、

また次に会うときのように…ごくふつうに、

「さようなら。」と彼に言った。

彼もまたいつもどおりどこか気だるげな表情で。

「ああ、また明日な。」

そう返した。



優しい、懐の深い王子。
小さな国を力づくで手に入れるなどするはずもない。


だってあの人はずっと言っていた。



なぜわざわざ他人の国を奪わなきゃいけないんだ、と。

「オレは残念ながら世界征服なんて器じゃねえよ。
 自分の領域守るだけでも働き過ぎなくらいだ。

 そりゃ奪ってくるなら戦うけどな…。」

いつかそう言っていたのを思い出す。


そんな人だ。


彼は侵略なんてしない。するはずがないんだ。



混乱するぼくを尻目に、ハルヒ姫は言葉をつづけた。

「なんか納得してないみたいねえ…。
 ああそういえば。」



「その国の王子ってやつが行方不明とか聞いたわね。」



え?



僕は反射的に顔をあげていた。



彼が行方不明…?




また脳裏に浮かぶ。

「また明日。」


明日なんて来なかったのに
僕と会える明日を疑っていなかった彼の顔が。




「ハルヒ姫〜!」
「あらみくるちゃん、どうしたの?」

もう一人、女性が現れた。
ショックを受けている頭でも少し驚く。

一見普通の女性だが…彼女は見たことがある。
面識があるわけではないが、知識として知っているしるしを、彼女は持っていたのだ。


なぜ脚をもっているのか、それは分からないが…。
彼女は人魚だ。


彼女もハルヒ姫の仲間だろうか。

まあどうでもいい…。


「あのっ、王子のお食事の材料がきれてしまってて…。
 ナガトさんたちにお願いを…。」

「ああ、あいつまだ眠ったままなの?」



…王子…?

いや、まさか彼女たちの言っている王子というのが
彼だというのはあまりにも都合のいい話だが。

第一ハルヒ姫は帝国の王子が行方不明だと言ったばかりだし…。



「ええ、それにそろそろシーツを交換しないと…。
 ですから王子をソファに動かさないといけないのもありますし…。」

「ああんもう、世話やけるわねえあの流れ王子!!」

流れ…?まあよく分からないが。
彼女にくみすることはできないな。



たとえ彼が今行方不明だったとしても
彼の国を滅ぼすだなんて…。


「あーちょっと、そこの軍師!
 あんた男よね。ちょっと手伝っていきなさい!」


「…は?」


男よね、って、女に見られた経験はありませんよと言っても良かったんですが

あまり意味はないでしょうね。


「…仕方ありませんね。」

「わあっ、いいんですか?
 助かりますぅ。」


できれば今すぐ帝国に戻って状況を把握しないと。
とりあえず姫の云う事を聞くフリをして…。


この人魚姫なら隙だらけだし…。


色々と考えながら、僕は人魚姫…みくるさんというらしい。
彼女の入って行った小屋に足を踏み入れた。



そして、次の瞬間呆然とした。



「…キョン…く…。」



もう僕だけが呼んでいた、
彼が嫌いな呼び名を口にした。



そこにいたまぎれもない「彼」の姿を見て。




                                       To be Continued…



あっはっはーご都合主義♪
でも楽しいです!

ちょっと勘違いがあったのでその点を修正しましたが、
他はほとんど変わりありません;

無精ですみません;;


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